マンション上階に住む幼児の足音は騒音、36万支払い命令

このニュースを聞いた時はびっくりしたものだ。下級裁では時たま変な判決が出ることがあるのでその類かと思ったのだが、そうでもないらしい。
ちゃんとした判例を読んでいないのでニュースからのみの情報からの判断になるが、この訴訟は子供の足音で損害賠償請求が認められたというよりは、保護者の対応の悪さで認められたというべきだろう。

受忍限度を超えているかいないかは、様々な要素を判断して決められる。最高裁での判断基準は以下のような事柄である。
?侵害行為の態様
?侵害の程度
?被侵害利益の性質と内容
?地域環境
?侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況
?その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果

被害者が快適な生活を送ることが出来なくなったことにつき、加害者が不法行為責任を負わなければならないかどうかを考えるにあたっては、民法709条により判断することになる。快適な生活を送る利益を奪ったこと(損害発生)について故意あるいは過失があったかどうか(故意過失判断)快適な生活を送る利益を奪ったことが被害者の権利を侵害した違法な行為になるかどうか(違法性判断)を判断しなければならない。そこで、これらを判断するには、故意過失とはどういうことか、違法性とはどういう場合かを考えなければならない。これらについては、大論議がある。受忍限度は、この大論議のなかでひとつの考え方として登場する。
この場合において、足音は自体は生活上やむおえないものだ。足音の大きさは歩行の仕方でも大きく違うので個人差があるが、普通に生活をしている範囲では違法でもなんでもない。大人であればマナーとして下階に配慮した歩き方を要求されて当然だが、子供の場合にはそれは無理と言うもので、親がたしなめる義務はあるが、禁止事項ではない。だから、幼児が室内を走り回ったり跳びはねたりした行為だけで受忍限度を超えると判断された訳では無い。全く防止の措置が行われていない事が(効果が有るか否かを問わず)、故意に続いたのだから不法行為であると認められる。つまり、この訴訟は、子供の足音で損害賠償が認められたというよりも、親の対応の悪さで認められたと言うべきだと思う。